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板橋な人
佐藤昌月 さん
木を見れば、物が見えてくる。板橋最高峰の職人さん。
熊野町にある工房で、黙々と木を彫っている方がいます。
現在74歳。板橋の無形文化財にもなっている、最高峰の技を持つ木彫職人さんです。
佐藤昌月さんに、お話を伺ってまいりました。
佐藤昌月さん
佐藤昌月さん(左)



60年近く木を彫っていますね。この仕事しか、私は出来ないんです。

---職人の世界に入られたきっかけというものは、何だったのでしょう?
私は、昭和6年生まれで、今年で74歳なんです。
終戦の頃で仕事が無く、家が農家でしたので、2年程農家の手伝いをしていました。
さて、自分の仕事も無いし、このままではしょうがない、何かないか。
と思っていたところ、兄が東京で彫刻の仕事をしていたんです。
その頃には、日本も社会情勢が楽になって来ていて、仕事も出始めていたんですね。
じゃあ、兄貴の所で仕事を習おうと思って、浅草に出たんです。
それが18の時でしたから、60年近く木を彫っていますね。
この仕事しか、私は出来ないんです。

---お兄様の所での修行時代は、何年ほどだったのですか?
10年ですね。
苦労はたくさんしました。私は、農家の出なものですから、農作業の影響で、手が固いんです。
彫刻は手先が器用じゃなくては出来ないんです。
始めた当時は、彫っても彫っても彫刻にならないんですよ。
彫った作品があまりにもひどいので、帰った方がいいんじゃないかとまで言われました。
しかし、私には、やれば出来るという自信があったんです。
普通の状態じゃだめだと決意し、人の三倍は努力しました。
それからは、仕事の虫でしたね。
あらゆる物を犠牲にして、仕事一筋です。

---ちなみに、独立されたのはおいくつの時なんですか?
25歳です。
やるだけやりましたから、周りからも認められ始めました。
ぐんぐん技術が伸びて行きましたからね。
日本の景気も右肩上がりで、仕事は絶えませんでした。
ばんばんばんばん働きましたね。





葛藤などしないんです。あるものを出していくだけ。


---木彫りの面白さとはなんでしょう?

それはそれは面白いものですよ。
角材がありますよね?
それが、仏像になったり、大黒様になったり、獅子頭になったりするんですから。
私は、仏像が得意なのですが、またこの仏像というのが奥が深くて、私などまだまだですね。

---木の難しさは、どのような点が最も難しいですか?
その形を見出さなくてはいけないところですね。
木を見ると、彫る対象物が、見えて来るんです。
その段階にまで、なかなか行かないのが、本当の所なんです。
自分の感じたままのものが作れたら、最高ですね。
努力と才能。この二つが無いと、いくらやっても無理です。
後は、夢中になってはいけないんですね。
夢中になって彫り過ぎたら、木はもう元にもどりませんから。

---一心に彫る中で、色々と葛藤があると思うのですが?
葛藤というより、どれだけ表現するかが問題でしょうね。
葛藤という事を気にしているようでは、ろくな物は出来ません。
葛藤などしないんです。あるものを出していくだけ。
先ほど言ったように、木の中に見えるものを、掘り出して行くだけなんです。
私は、5年前に脳梗塞を患いましたが、リハビリしてカムバックした後、一段と、技が冴える様になりました。


板橋は、伝統工芸の職人は少ないんですが、各人の技は、凄いものがあります。


---板橋に住まわれて、どのくらい経つのでしょう?

板橋には、もう、48年になりますね。
板橋の思い出と言えば、ここに来た頃は、都落ちだと思いましたね。笑
浅草の職人が、とんでもないところに来ちゃったなと。
ところが、違ったんですね。
板橋は、発展する街だったんです。
たくさんの仕事が私を待っていました。
25歳の時、板橋に来たのですが、名人が来た。と、騒がれましたね。

---板橋の伝統工芸保存会の会長さんでもいらっしゃるということですが?

板橋の伝統工芸保存会は、まだ、できて2年にもならないんです。
他の区にはあるのですが、板橋には無かったんですね。
板橋は、伝統工芸の職人は少ないんですが、各人の技は、凄いものがあります。
兜にしろ、刀にしろ、江戸小紋、刺繍、鼈甲、友禅、象牙、彫金、筆、等、凄い人材がいるんです。

---今、職人として進められている事などがありましたら。
作品を作って、伝統を残して行く事ですね。
色々な場で、作品を発表して行く事と、美術館に、常設展を作ってもらう事が目標です。
区美術館は、使われていない素晴らしいショーケースがたくさんあるんです。
使い道が無いのなら、我々が生かそうじゃないか。 と、交渉しています。

---今後の抱負などがありましたら。
なるべく、知られざる職人達の作品の発表の場を作り、そして、受注まで持って行きたいですね。
私個人としては、なるべくいいものをつくり、気に入ったように彫り上げる。
これに尽きますね。

---最後に、メッセージをお願いします!
我々職人は、ただ自分の仕事に打ち込み、何十年もやって来ました。
そういう職人達の展覧会をなるべく多く開きたいと思っていますので、ぜひ観に来て下さい!

---ありがとうございます!


伝統工芸士 
佐藤昌月 さん


板橋区伝統工芸保存会 会長

【職歴】
黄綬褒章 
国際アカデミー賞受賞  
労働大臣賞受賞(現代の名工)
東京都優秀技能賞
東京都知事賞
板橋区無形文化財

【職種内容】 
恵比寿
大黒の様な伝統的立像、動物立像 
他多種額彫り
ブローチ、ネックレス等のアクセサリー

【材質】 
欅 檜 楠 桑 黒壇 紫壇

●大物
立像 額彫り等 檜 楠 欅

●小物 (装身具)
桑 黒壇 紫壇


※佐藤さんの作品は、いたばし観光センターにも展示されています。

●いたばし観光センター
〒173-0004
板橋区板橋3-14-15
TEL 03(3963)5078
FAX 03(5248)7093


仁王促鬼



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