---友禅職人の世界に入られたのは、
お幾つの時だったのでしょうか?
18才の時ですね。
長野県の出身なのですが、私の周りに、
信州留袖の職人さんがいたんですね。
自然と、私も、その流れで、
職人の世界に足を踏み入れたんです。
長野で2年間、修行をして、20歳の時に上京して、
日本橋で8年間修行を積みました。
元々、私の育った周りに、
友禅の下絵を描いたり、「糊付け」と言う作業をする職人さんがいて、
子どもながらに、
着物の世界の職人になる下地作りとしての環境には、
とても恵まれていたなと、思いますね。
着物作りと言うのは、1つの着物が出来るまでに、何十と言う、工程があるんです。
1つの工程に、何十年とキャリアを積んだ職人さんが携わるわけですから、
着物が出来上がるまでには、職人さんの培って来た年月を計算すると、
何百年と言う時間がかかっているものなんですね。
今、40年と言う、自分の費やして来た歳月の中で、色々な技を使い、
経験を積んで来ましたので、それに伴って、イマジネーション豊かな世界を、
創造出来るようになった事が、とても嬉しいですね。
---着物に絵を描かれる、難しさとは、どういったところでしょうか?
着物に絵を描くと言う事は、紙やキャンバスに絵を描く事と違って、
制約があるんですね。
染め付ける。と言う事は、作風によって、どういう表現で、どういう技法で、
と、手法・工程が、全て違うんです。それが、一般の絵との、大きな差でしょうか?
僕がやっている東京友禅と言うのは、模様絵師と言って、
出来上がる工程をプロデュースするんです。
染色を最後まで見届け、工程を組み立てて、作業ごとや、作風ごとに、
各工程の職人さんに、作風のポイントを伝えて、全工程をまとめあげるんです。
京都の友禅と違い、流れ作業ではなく、
全ての染付けの工程を、1人で責任を持ち、作り上げて行くんです。
そういう部分で行くと、東京友禅は、良い意味で、決まり切っていない、
他の産地には無い、変わった染めが出来ると言う事ですね。
---東京友禅の特徴とは、何でしょうか?
江戸時代から、今に至るまで、その時その時の、
流行と言うものがありますよね?
東京友禅と言うのは、とても、
その時代の先端を行ったデザインが多いんですね。
先にも言いました通り、
全ての工程を1人でプロデュースしますので、
とても職人さんそれぞれの感性と技術が、
重要視されるんです。
あと、量産出来ないところも、特徴でしょうか?
絶対的な生産量が少ない着物ですので、
東京友禅と言う言葉を、
知らない方もたくさんいらっしゃいますね。
---板橋に工房を構えられての感想などがありましたらお願いします。
僕は、長野の出身ですので、東京に来るには、高速道路や、17号線を使うんですね。
板橋と言うのは、高速の出口があって、住むには交通の便をとっても、
とても良い環境だったんです。
日本橋で修行をして、最初は、弥生町に10年住み、
現在、大谷口に25年居を構えています。
26歳で独立して、すぐに板橋に住みましたので、
もう、板橋の在住歴は長くなりますね。懐かしい思い出でいっぱいですね。
あと、板橋で職人をしていて、この2年前より、板橋伝統工芸保存会も出来、
区から、無形文化財保持者にも認定され、板橋で仕事を続けて来て、
この仕事を追及して来てよかったと思っています。
板橋は、とても住みやすい街で、私は大好きです。
友禅の事以外は、普段何も考えない私ですが、思うところは、こんなところでしょうか。
---今の寺澤様の、スタンスとは、どのようなものなのでしょうか?
バブルがはじけて、もう10数年経ち、ますます、着物業界が衰退して行く中で、
その点、僕は、早い時期に、個人の方々のおあつらえの創作をする職人に、
自分の道を決めましたので、職人さんの技術が衰退して行く中で、
自分の技を思いっきり、高める事が出来るようになって来ました。
とことん僕の納得の行く、良い物を作っています。それが、何よりの僕の強みですね。
そうした中で、僕の事を信頼して、制作を依頼して下さる方も増えて下さり、
ああ、僕の歩んで来た道は、間違っていなかったんだな。と、強く感じています。
---今、手掛けられているお仕事は、どのようなものなのでしょうか?
今、依頼していただいているのは、振袖や内掛けが多いですね。
それもお孫さんの為に、作っておこうという方が、
多いですね。今、3歳のお孫さんが、成人された時や結婚式などに、
胸を張って着られるような・・・
そう言うものを依頼されていますので、職人冥利に尽きますね。
例え、数をこなせなくたって、依頼された方に感動していただけるような仕事をしていけば、
必ずそれを理解して頂けるんだ。という事が、とても嬉しいんです。
着物職人の技術が衰退している今、気持ちのこもった依頼を、恐くて受けられない職人さんが、
たくさんいるんです。
----最後に、板橋区民の方に向けて、メッセージをお願いします。
僕は、いつまでも、自分が納得してお客様に満足していただけるものを、
作り続けて行きたいと思っています。
そう言う僕のスタンスを、皆さんが分かっていただけると、とても幸いです。
これからも、僕は、皆さんに納得していだだけるものづくりをしていきます!
---ありがとうございます! |