---防災課さんというのは、どのような仕事をされているのでしょう?
自然災害、特に地震の対策を中心に担当する課です。
この4月から、生活安全という事で犯罪防止なども含まれてきました。
地震以外にも、区民の皆さんの安全を守る「防災課」という形になります。
---ここのところ各地で大きな地震が続いていますよね。板橋区の地震対策への取り組みについてお話をしていただけますか?
人的被害、物的被害に何が想定されるか。
これまでに起きた大地震を参考にしながら対策を立てています。
まずはライフラインの早急な復旧が重要課題となりますね。
阪神淡路のデータを参照にしますと、
地震が起きてから、いわゆるライフラインが復旧するまでにかかった時間というのは、水道で90日。下水道で130日。電力が6日。都市ガスが83日。電話が15日。
なんです。
これは10年前の数字ですので、現在はもっと早く復旧できると見込んでおります。
全くライフラインがだめになり、物資が無くなるかというと、そうでもありません。
新潟の中越地震の時は、物資が途絶えたのは2日間だけのようです。
道路が比較的に通行可能になった事が大きかったのですが、3日目ぐらいからは、コンビニやスーパーなどが窓口になって物資がどんどん補給されたんですね。
そうなると、物資はどんどん来ます。
なので、最低でも2日分ぐらいを各自で用意していただければと思いますね。
物資はそれなりに早い時期に出回って来るので、そういうもの以外に困るものが次に大事になってきます。
---トイレ、寝泊りなどですか?
という事ですよね。
トイレは、板橋区では、627基を用意しています。
一基で5000回ぐらい使えるんです。
水は排出して、圧をかけて、固形物だけ残していくしくみになっています。
でも、いかんせん公衆トイレの乱暴な使い方をみても、回数の問題以前に、2日目以降から使えなくなる事が考えられます。
実際の災害時には、出来るだけ、後に使う方の事を考えて大切に使っていただければと思います。
---やはり、生理的な事で苦労がありそうですね。
3日目ぐらいになると、お風呂の事が出てくると思うんですよね。
お風呂の問題だけは、なかなかですね・・・・。
簡易シャワーなどは難しく、用意できてないのが現状です。
できれば、避難所に備えて行きたいのですが、経費の問題もあり検討中です。
宿泊・寝泊りで言うと、区内に約80ヶ所ほどの避難所を設けています。
主に小学校と中学校ですね。
体育館と学校の教室も含めて考えています。
元気な方は体育館でごろごろしていただき、妊婦さん、高齢の方、寝たきりの方は、教室でそれぞれの方だけ集まるといった避難所の運営をしていく形を想定しております。
こういった避難所での生活では、どうやってプライバシーを確保するかが大切になります。
新潟の事例ですと、ダンボールの箱を組んで、仕切りを作られた避難所があったようです。
やはり、どれだけ仲が良い方でも、境目も無しに寝ているというのは、1日ならまだしも2日目3日目になってくると、精神的に参ってしまうという事もよくわかりますので、こちらも対策を検討しております。
---あと、不安なのは、医療でしょうか?
医療については、板橋の医師会さんと協定を結んでいまして、緊急時には指定した避難所の方に派遣していただくようになっています。
大怪我をされている方については、東京での手当てではなく、被害を受けていない地域の病院の方へ搬送することなどを計画しています。
---地震が起きた時、思わず電話をしてしまいますよね。通信はいかがなのでしょう?
通信というのは、私どもも、一番弱いところなんです。
一つは、防災行政無線というものがあります。
夕焼けチャイムといって、夕方五時か六時に「夕焼け小焼け」が流れますよね。
あれが防災無線です。公園や学校の隅に立っていて区内に105箇所ほどあります。
災害時にそこから非常用の放送が流れます。
これはこれで有効なのですが、デメリットもありますので、
それを補完する意味で、ケーブルテレビのJCOM板橋さんとも協定を組んでいます。
また、携帯電話のメール機能を利用するというのも試験的に実施しています。
---日頃から私たちに出来る対策はあるのでしょうか?
地震の場合、揺れが怖いのは怖いのですが、問題は、怪我をされたり、お亡くなりになる。物が壊れるといったことです。
被害想定をした時に、最も大きな事は「何時に起きるか」という事なんです。
関東大震災はお昼の11時59分。
お昼時で火を使っていた人が多かった。そして、外に出ている人も多かった。
そんな状況の中、大きな火災が発生したため、火災で亡くなられた方が死者全体の8・9割だったんです。
一方、阪神淡路は、明け方の午前5時頃ですから、こちらは家に居る人が多かったんですね。
その結果、家具が倒れたり、家の倒壊でお亡くなりになった方が多かったんです。
阪神淡路以来、家具の転倒防止や家の耐震化が盛んになりました。
家具の転倒防止の器具などは、やっておくだけで随分と違いますので、是非お願いします。
ただ、家具が倒れなくても、引き出しが飛び出てくるという事が多くあります。
阪神淡路では、20数インチのテレビが横に飛んで行ったというケースがありました。マンションの建物にひびが入るくらいの凄い力が瞬間的にかかるんです。
テレビくらいは、簡単に飛んで行ってしまいますよね。
日本の住宅事情を考えるとちょっと難しいとは思いますが、寝室には家具やテレビを置かない事も必要かと思います。
あと、板橋区が推奨している、区民の方の備えとしては、1、2日分の飲み物・ラジオ・懐中電灯等、いわゆる避難用品などは、持っておかれておいた方がいいと思います。
私どもで区民の皆さんにご紹介しているのは、飲料水と食料・懐中電灯・ラジオ・携帯コンロ・筆記用具・衣料品などです。
---お話を聞いていて、防災への意識が変わってきた気がします。
最後に、いたばし区民の方に一言お願いします。
地震は防げませんが、被害は防げます。
地震は必ず来るものだという事を想定して備えをしていただきたいと考えています。
家屋の耐震化というのは難しいかもしれませんが、相談の窓口はありますので、ぜひご相談ください。
家具の転倒防止など、ご自分で出来ることはどんどんやっていただければと思います。
私ども区役所は、発災直後は何の力も持てませんので、区民の皆さんの日頃からの備えが必要です。
怖い怖い、いつ来るか、と、恐怖感に捕らわれるのではなく前向きに取り組んでいただければと思います。
---ありがとうございました!